99.9%の配車率を誇る「希望日時配車」。“AIによるリアルタイム需給予測”で、タクシー業界の課題を解決!
2020年9月、タクシーを起点にモビリティの未来を創造する新たなタクシーアプリ「GO」をリリース。これまで以上に「乗りたいときに乗れる」「早く乗れる」体験を提供するべく、2020年11月には新たに「希望日時配車」機能を開発しました。このサービスは、その名の通り、お客様の希望した日時に合わせてタクシーの事前手配ができるというもの。開始から2週間あまりで10,000件以上の利用、お客様からの注文に対して99.9%以上の配車率*など、順調なスタートを切っています。
今回は、「希望日時配車」機能の開発メンバーである、サービスマネージャーの森川、AIエンジニアの織田、サーバサイドエンジニアのプレシ・カンタン、プロダクトマネージャーの脇水の4人に話を聞きしました。これまで“配車予約サービス”が抱えていた課題とは?そして、どのような仕組みで解決したのか?について語っています。
* 希望日時配車を受け付けた後、実際に車両を確定できた割合。お客様によるキャンセルを除く。
▲ 左からAIエンジニアの織田、サービスマネージャーの森川、サーバサイドエンジニアのカンタン、プロダクトマネージャーの脇水
開始2週間あまりで10,000件以上の利用。順調なスタート
――2020年11月にリリースされた「希望日時配車」機能について教えてください。
森川:「希望日時配車」というのは、タクシーアプリ「GO」の新たな機能として2020年11月より開始したサービスです。具体的には最短で25分後から7日後までの希望日時を指定して、タクシーの事前注文が可能になります。これまででいうと、お客様から予約注文があっても配車できないケースが半分以上だったのですが、AIによるリアルタイム需給予測を用いることで過去の10倍以上の注文件数を受けることが可能になりました。まずは、東京と神奈川の2エリアからスタートし、次に1月14日からは京都・大阪・神戸の3エリアでもサービス提供を開始しています。
サービスとしてはとても順調で、機能スタートから2週間あまりで10,000件以上の利用があり、99.9%以上の配車率を実現。この結果を見て、開発に携わったメンバーもホッとしているところです。
カンタン:これは、本当に嬉しい結果でしたよね。理論上では問題ないと分かっていましたが、現実ではどうなのか…については最後まで不安がありましたから、喜びも大きかったです。リリース前にはMoTの社員全員で“本当に機能するのか”“ちゃんと時間通りに配車されるのか”を検証したのも思い出深いですね。
脇水:そう、社員全員が「希望日時配車」サービスを利用する期間が1週間ありました。私も朝の混雑する時間帯でも、遅れることなく希望時間ぴったりに配車されたことを体験し、感動しました。「おお、本当に来てる!」って(笑)。この検証期間を経たことで、自信を持ってリリースすることができましたね。
――これまでは「お客様から予約注文があっても配車できないケースが半分以上」とのことでしたが、どのような課題があったのでしょうか。
森川:タクシーを予約できる枠には限りがあり、予約が取りづらいという課題がありました。その理由の一つとして、タクシーは一人ひとりのお客様によって行き先が異なるため、車両がいつ空くのか把握・管理することが難しく、事前に在庫管理ができずにいたんです。
一方で、タクシー会社としては日時指定予約を受けた場合、絶対に遅れないことを条件としますので、確実に配車できる件数だけを受けていくことになります。つまり、少しでもリスクがある場合はお断りするケースが多くあったんです。結果、受けられる予約枠がどうしても少なくなってしまい、お客様の希望に合わせた予約を受けられずにいました。特に通勤時間帯、雨天の日など予約が集中するタイミングではタクシーに乗れない状況が目立っていました。また、タクシー会社としても確実に配車するために、早いタイミングで乗務員を確保していたことも課題の一つに。営業上のロスが大きく、売上にも影響が出ている現状がありました。
脇水:実際にアプリのレビューでも「タクシーの配車予約ができない」「朝の混雑時間帯だとタクシーがつかまりにくいので、事前にタクシー予約ができたらいいのに…」という声が多くあったのも事実です。お客様から強く求められていながら、提供できていなかった状況を変える必要があると考えていました。
AIによるリアルタイム需給予測で「希望した時間に乗れる」を実現
――「希望日時配車」機能を開発された背景でもあるんですね。具体的にどのような仕組みで解決したのでしょう?
織田:タクシーデータを踏まえてAIによって注文数を調整しています。これまでのように予約枠を人の経験に頼って埋めるのではなく、エリアや時間帯などのトレンドを予測し、アプリのシステム内でタクシー配車を行なう仕組みを取ることにしました。
もう少し具体的にお話すると…例えば、世田谷区の朝8時~9時は100台まで注文が受けられるというデータがあったとします。これまでだと、そのデータを基にオペレーターが先着順で100件の予約枠を埋めていく対応を行なっていました。
ですが、世田谷区といっても北と南で分けてみると、全く状況が違っているわけです。幹線道路の有無でも交通事情は大きく変わってくるでしょう。時間においても8時00分と8時30分では、予約が受けられる数は異なっているんですよね。私たちはそこにAI技術を活用することで、場所・時間をこれまで以上に細分化して現状を把握。タクシー車両とのリアルタイムな位置情報連携と高度な配車ロジックによって、「希望した時間に乗れる」体験を実現することを目指しました。
――「希望日時配車」機能を成功させるにあたってポイントになった点はありますか?
織田:ポイントとなったことは2つ。1つはお客様から注文が入った際にどこまで受けていいかを判断すること、2つは注文を受けた案件に対して遅れずに配車することです。特に2つめに関しては、単に遅れないことだけではなく、早く着きすぎないことも重視していました。長時間待機するようでは、乗務員に負荷がかかり効率的に動くことが難しくなりますから。そして、この2点をクリアするには現状を正確に把握し、モデルとなる世界を作った上でしっかり分析する必要がありました。
森川:このシミュレーターを正確に作りこむことがとても大変でしたよね。
織田:ええ、そうです。「GO」が旧MOVとJapanTaxiの統合アプリであることもあって綺麗なデータが揃わなかったことも大きかったですね。いろいろ苦労はありましたが、最終的に完成したシステムとしては非常にシンプルで、特別難しいAI技術を取り入れてはいません。ベーシックな機能で作り上げることで、専属のエンジニアがいなくても運用したり、将来的に拡張したりできる仕組みになっています。
脇水:個人的には、AI技術がきちんとプロダクトに紐づいてローンチされ、事業にきちんと貢献するサービスとして提供できる技術力の高さがMoTの面白いところだと思いますね。
織田:確かにそれはありますね。AIやアルゴリズムを活用し、モビリティの発展を牽引していくという、私たちが目指すことが実現できていると思います。
――今後、サービスとしてさらに強化していきたい点はどこでしょうか。
脇水:現在は、25分後から7日後までの希望日時を指定して注文できますが、「希望日時配車」が利用される時間として、希望日時の30分〜1時間前の注文が想定以上に多いことが分かりました。これは実際にお客様が乗車したいと思っている少し前の時間に注文しておきたいというニーズが強く反映されている結果だと思います。ですから、“25分後”という時間をさらに短縮できると、よりお客様のニーズに応えていけるのではないかと考えています。
織田:そこでいうと、現状のロジックでも5分~10分の範囲であれば短縮は可能な範囲です。車両探索時間を短縮することで、お客様が通常のタクシー注文と同様の感覚で配車注文していただけるのではないでしょうか。
カンタン:あとは、対応エリアですね。現在は、東京・神奈川・京都・大阪・神戸での対応になりますから、スピーディに拡大していけたらいいですよね。「希望日時配車」機能は、エリア関係なく求められているサービスですので、全国エリアで展開を目指していきたいところです。
――最後に、どのような方がMoTに向いているのかお聞かせください。
カンタン:MoTが目指しているのは、タクシーの進化を起点としたモビリティのさらなる発展です。その中には、これまでにない取り組みもたくさんあります。ですから、そういった意味でも、誰かに教えてもらう、指示を待つではなく、自分で考え動いていく力はとても求められていると思いますね。
織田:確かにそこは求められます。現在、私のチームにいるメンバーもカンタンさんがおっしゃってくれたようなスキルを持ったメンバーばかりです。自分の技術力を使って、サービスを良くしていくために行動していける方に向いている環境ではないでしょうか。
森川:あとは、モビリティそのものへの共感も重要なポイントです。今回お話させていただいた内容は、タクシー産業に関することが中心でしたが、私たちはその先を見据えています。集中渋滞・交通事故・車いす利用者など交通弱者の増加、都市化/過疎化といった交通・社会課題の解決を、共に目指してくださる方であれば、MoTで活躍いただけると思いますね。
※掲載内容は2021年1月時点の情報です。