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洗練したAI技術で交通事故を防止、さらにその先へ―― 「DRIVE CHART」は自動運転、そして街づくりの礎となる

Mobility Technologies(MoT)が事業者向けに提供する「DRIVE CHART」は、“交通事故削減”を支援するサービスです。

車両に設置したカメラの映像やセンサーをもとに、AIを用いてドライバーの運転を分析。タクシーやトラック、商用車などにおける危険な運転を可視化し、安全運転指導に活用できます。

このサービスで磨いた技術、そして蓄積したデータは、来る自動運転時代に何をどう担っていくのでしょうか。MoTのスマートドライビング事業部 部長である川上裕幸に聞きました。

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交通事故という「社会課題」をAIによって改善する

――次世代AIドラレコサービス「DRIVE CHART」は、どのような経緯で開発されたのでしょうか。

「DRIVE CHART」は、MoTの前身である旧DeNAオートモーティブが、“交通事故”という社会課題をAIによって改善するために生み出したサービスです。

車両に外向きのカメラと、運転者を映す内向きのカメラをつけた車載器をあらかじめ設置し、カメラの映像をAIの画像認識技術を活用してリアルタイムに分析します。

さらに、車載器に搭載されたGPSと加速度センサーのデータと地図情報なども組み合わせることで、習慣となっているドライバーの危険運転や潜在的なリスクを検知します。たとえば一時停止ができているか、車間距離はとれているか、また、ドライバーの脇見や急加速、急ブレーキなどを検知し、危険シーンとして検出しています。

――川上さんは、旧DeNAオートモーティブで「DRIVE CHART」開発プロジェクトを立ち上げられました。なぜ「DRIVE CHART」をつくろうと考えたのでしょうか。キャリアと合わせてお聞かせください。

まず私自身のキャリアを振り返ると、2011年にDeNAに入社し、モバゲーの部署に配属されました。2015年にオートモーティブ事業が立ち上がると、あるプロジェクトで技術的な相談を受けるようになり、「交通」に関する世間の注目度が上がる中で、そのサービス開発を間近で見ている内にこの領域に興味を持つようになりました。

DeNAで約6年間、エンタメ系のサービスやプラットフォーム開発で一定の経験を積むことができ、次のステップを考えるにあたり、サービスの中でも「交通」という生活に密着したものを携わりたいと考えました。自分の気持ちもそちらに向いていましたし、これまでに培ったスキルも活かせると思い、異動を決めました。

日本の交通事故件数を見ると、2019年は年間38万件発生しており、死亡事故も3000件を超えています。徐々に減少傾向にあるとはいえ、膨大な数であることに変わりはありません。加えて、最近は高齢者の交通事故なども頻繁に起きています。今後、高齢化が進む中で、大きな社会課題と言えるでしょう。もちろん、交通事故は悲劇を生むだけでなく、経済的な損失にもつながります。

そこで、私は旧DeNAオートモーティブに異動して間もなく、交通事故という社会課題をAIによって解決することを目標とした、「DRIVE CHART」プロジェクトを立ち上げました。

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どのように「危険運転」を判断するAIをつくったのか

――AIの画像認識技術がシステムの核になっていますが、どのように危険な運転を検知するAIを構築していったのでしょうか。

大前提として、AIが映像の中にある車や白線、人などを認識する必要があります。そこで、それらを認識するための見本となる教師データを与えました。10万枚以上の画像について、車や白線、人などにタグをつけて読み込ませます。すると、AIはそれを学習して、次第に自分でこれらを認識できるようになります。その上で、今度は車間距離や一時不停止、速度超過など、運転が危険かどうかをAIが判断できるように学習させました。

まずは、教習所で教えられるような基本事項をベースに、人間が一定のルールを定めます。車間距離なら、「前の車との差が何秒以内なら危険」など。過去の事故データから、どういった運転が重大事故につながるか、すでに分析されているものが多数あります。それらを活用して、まずは事故との関連性が高いもの、特に危険な運転をピックアップして判断できるようにしました。

ただ、ここで難しいのは、道路は一律ではなく複雑だということです。ひとくちに車間距離と言っても、道路の狭さや環境、あるいは当日の天候で最適な距離は変わってくるでしょう。こういった部分は、データや知見を活かしながら、その判断方法を構築していきました。

――確かに、危険な運転の線引きは難しいかもしれません。

一時停止の判断も簡単ではありません。3秒ほどきっちり停止した車なら、明らかに一時停止の実行を認められますが、微妙な止まり方のケースも多い。では、どこまでの挙動を「止まった」と認めるか。安全な運転と見るか。このラインはかなり難しいです。

これらについては、データを蓄積する中でAIが機械学習で学んでいきます。速度だけでなく、他の要素も踏まえて「この特徴から止まったと認められる」という判断ができるようになっていきます。

あとは、総合的に運転を見るのも重要です。仮に、「速度」という一要素で安全運転かどうかを見ると、加速や減速が少ない運転が安全と考えられます。しかし、それは一時停止をしていない可能性もある。だからこそ、内外カメラの映像、そしてGPSや加速度センサーなど、いくつもの情報を複合して高度に判断するシステムとなっています。

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道路の映像をデータにして、街づくりにも活かしていく

――今後のサービス展開をお教えください。

「DRIVE CHART」は、交通事故に繋がる可能性の高い危険シーンを自動的に検知しています。これまで、脇見・車間距離不足・一時不停止・速度超過・急ハンドル・急加速・急減速の7項目を検知していましたが、先日、新たに「急後退」を追加しました。後退事故は、発生事故原因の約4割を占め(「DRIVE CHART」導入企業3社の2018〜2019年実績より)、運行管理者の方々から多くリクエストを頂いていた項目です。今後も、交通事故削減につながる機能を継続して研究開発していきます。

「DRIVE CHART」には、車載器のカメラから日々様々な道路の映像が集まってきます。そのデータは、道路に関する様々な変化を把握する情報源になります。例えば、地図データベースに活かすことで、道路の建設や交通標識の新設・変更、路面ペイントや信号機の情報など、日々刻々と変化している道路情報の変化に対応できるようになるのです。

また、道路インフラの改良面から交通事故対策・渋滞対策を立案することも可能になります。「DRIVE CHART」が取得したデータを基に、交通事故や渋滞に至っている最新の交通状況を効率よく取得することはもちろん、車両の走行データや速度・加速度などの挙動データに加えて“危険事象発生時の走行映像”を分析することで、事故要因を具体的に特定できるためです。

さらに今後、自動運転や、建設コンサルタントなどとの協業による“街づくり”にも「DRIVE CHART」のデータを活用していく方針です。

――事業を発展させるには、より多くのメンバーが必要です。どのような方がこの仕事に向いているでしょうか。

「DRIVE CHART」で何をしたいか、何をつくりたいかという大きな目的を重視している人です。細かなシステムの開発以上に、「事故を削減して社会課題を解決する」という大きなテーマに共感する人が向いていると思います。

それと、私もエンジニア出身ですが、AIやビッグデータ、IoTという、今まさに重要とされる技術にすべて携われるのは魅力だと思います。加えて、実社会に接したサービスやシステムを作るので、それも大きな意義になるのではないでしょうか。

デジタルのサービスやシステムは、デバイス内に閉じるケースも多いですが、ここでつくるものは実社会に取り込まれますから。

――エンジニアのキャリアを考える上でも、大きな経験になるかもしれませんね。

そうですね。実社会に投入されるサービスは、広い技術領域が絡みます。それは自身の能力を伸ばす上でも価値になるでしょう。特に交通産業は社会課題とつながっており、確実にこれから伸びるはず。その産業の中で、広い技術領域に携わりたい人にとっては、とてもやりがいのある仕事だと思います。

※掲載内容は2020年10月時点の情報です。

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