「テストだけのQA」じゃない。プロダクト開発にもコミットする品質の番人たち
“品質の番人”と表現されることもあるテストエンジニア。ただ、役割の重さとは裏腹に、フォーカスされることが比較的少ないポジションだったりすることが一般的です。
しかし、MoTでは違います。プロダクトマネジメント本部のなかにテストエンジニア組織であるクオリティマネジメント部がおかれ、専門性を発揮し、他のメンバーとのシナジーを活かしながら、プロダクト開発の一翼を担っています。
いわゆるQAエンジニアとは少し毛色の違うクオリティマネジメント部の働き方について、執行役員/プロダクトマネジメント本部本部長の黒澤隆由と、クオリティマネジメント部部長の澤田雄一が語りました。
なぜ「クオリティマネジメント部」なのか
ークオリティマネジメント部がプロダクトマネジメント本部に内包されている理由を教えてください。
黒澤:大きく分けて2つあります。1つは、QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)のバランスを高いレベルでとっていくためです。
もともと私はプロダクトマネージャー(以下、PdM)としてプロダクトを期日までに高いクオリティでリリースしていかなければならない立場なのですが、クオリティマネジメント部が担うテストフェーズは非常に重要です。
要件の変更、開発の遅れなどによる納期のしわ寄せがいくフェーズでもあるので、見方によっては一番しんどい部分でもあります。だからこそ、テストフェーズを含めたマネジメントこそがPdMが担うべき役割だと考えています。
同時に、PdMとテストエンジニアが同じ部門で協働するシナジーも大きい。QCDに関しても、たとえばPdMが要件定義した段階でクオリティマネジメント部にレビューしてもらうことで「こうした方が品質観点で安定するのではないか?」といった意見をもらうことができる。すると、結果としてその後の設計もシンプルになって、開発コスト削減にもつながります。クオリティマネジメント部がプロダクト開発に関わるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
もう1つは、メンバー自身の主体性向上のためです。テストフェーズだけを担当していると、つい受け身になりがちですが、本来はプロダクトだけに限らず、開発プロセス全体を改善していける様々な強みや経験を有していますので、より広い視野で主体的に関わっていけるよう、プロダクト開発全体を俯瞰できるポジションを用意しました。
澤田:プロダクトマネジメント本部には、クオリティマネジメント部以外にプロジェクトマネージャー(PjM)やデザイナー、データアナリストなどのチームが所属しているのですが、組織の立て付け自体珍しいと思います。そのおかげで関係性はすごくフラット。いわゆる“上流工程”“下流工程”といった意識はせずに、建設的な議論が行なえています。PdMをはじめとする他のロールの動きが見えるため、クオリティマネジメント部のメンバーからも「働きやすい」という声が多く聞かれます。
ー「クオリティマネジメント部」という名称も珍しいですよね。
黒澤:チーム名についても強い想いを込めています。
一般的にQAという言い方をしますが、「Quality Assurance」を直訳すると「品質保証」。しかし、品質を保証するチームではないんですよね。かたや、品質管理を英訳すると「Quality Control 」でコントロールも少し違う。
メンバーの“個”を主語にしつつ、様々な観点から品質にコミットしていることを表現したくて、澤田にも承諾を得てクオリティマネジメント部という名称にしました。一人ひとりが「自分がクオリティマネージャー」という意識でいて欲しいという願いも込めています。
クオリティマネジメント部がプロダクト開発に関わる意味
ー先ほどクオリティマネジメント部がプロダクト開発に関わることのシナジーについて話題が出ましたが、もう少し詳しく教えてください。
澤田:たとえば「クオリティマネジメント部発でこんな機能が実装された」というエピソードは残念ながらまだありません。しかし、グロースのヒントとなる素材を提供している自負はあります。
私たちの最大の責務は、テスト活動を通じてプロダクトの状況を多角的な視点で分析すること。定量的なデータから定性的なデータまで洗い出し、忖度なくPdMや開発エンジニアをはじめとするプロダクト開発に関わっている関係者にインプットしています。
実際、彼らも私たちが提供したデータから「じゃあ次はこうしよう」と改善のヒントにしてくれています。新機能実装のように明らかな成果ではないかもしれませんが、クオリティマネジメント部として大きな役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。
そして、よりシナジーを発揮していくためには、私たちが提供するデータの精度をより高めていかなくてはなりません。そして、これまで以上にインプットしていくこと。PdMや開発エンジニアにとっては少し耳の痛い話でも、意思を持ってしっかり「品質状況 = 事実」を正確に伝えていくことがクオリティマネジメント部の役割だと考えています。
ーすごく“大人の組織”という印象を受けますが、マネジメントにおいて意識していることはありますか?
澤田:きちんと意見を伝えるようには伝えていますが、そんなに細かいマネジメントはしておらず、基本的に個人の裁量に任せています。目的さえブレていなければ「失敗を恐れずに、自分の考えや判断をもってやってください。何か困ったら相談して」と。
一点だけ挙げるとするなら、PdMや開発エンジニアのモチベーションを下げないこと。私たちがテストを通じて課題を見つけたとしても自分たちでは対処できません。だからこそ彼らに対してプラスのフィードバックも大事にしています。あくまでもフラットなパートナーとして関わっていくためのコミュニケーションを重要視しています。
ーPdMや開発エンジニアはクオリティマネジメント部のメンバーにどういう印象を抱いているのでしょうか?
黒澤:ものすごく信頼しています。
クオリティマネジメント部には杓子定規に「これはできません」というメンバーはおらず、みんな前向きに実現するための方法を必死に考えてくれている。PdMから難易度の高い要望をされることもありますが、きちんと向き合って、クリアしています。何かあっても、「クオリティマネジメント部のメンバーが検討してくれているならきっといい落とし所を見つけてくれる」と。
だから、対立するようなこともありませんし、信頼関係をベースに様々な議論が建設的に行われています。本当の意味で、フェアな関係性が築けていると思います。
クオリティマネジメント部で活躍できる人材とは
ーでは、今後の課題についても教えてください。
澤田:課題は大小問わず数多く存在しておりますが、一番の課題としては、クオリティとスピードの両立です。クオリティとスピードの両立はクオリティマネジメントにおいて永遠のテーマなので、諦めることなく泥臭く向き合っていかなくてはいけません。
例えばひとつのプロセスを改善することで、今まで10分かかっていたところが5分に短縮されたとします。たった5分ですが、10回、20回と積み重ねていくことで結果的に業務効率が少しずつではありますが改善されていきます。また様々なテスト業務に対して独自ツールを構築し自動化の導入を進め、人がやるべきところにより注力出来る環境を提供し、人がやることの価値をより見出すための工夫も数多く行われております。このようなことを繰り返し行うことで、結果的にプロダクト開発のスピード感や納期へのコミットに追従するための組織・チームに成長してきていると思います。「銀の弾丸はない」仕事だからこそ、日々地道に業務改善の方法を模索しています。
黒澤:大前提として、今のクオリティマネジメント部のスペシャリティとアウトプットのレベルはすでに十分に高いのですが、我々が実現したいことをよりスピーディに実現していくために、開発のアウトプット総量を増やしながらも、決して品質は下げず、テスト効率をさらに高めることで、リーンなテスト体制の実現を目指して欲しいと、かなり無茶なお願いをしているのですが、澤田をはじめ各メンバーが真摯に向き合って、高いレベルで期待に応えてくれています。
澤田:今までのやり方だったら2〜3回白旗を上げていたと思いますが、黒澤さんからの要望に対して「一緒に考えよう」とメンバーに相談しながら、プロセスを見直し続けながら取り組んでいます。
ー同時に、クオリティマネジメント部の組織強化も視野に入れていると思います。
澤田:おっしゃる通りです。ただ、「テストエンジニアとして言われたことを着実にこなしていました」というタイプだとMoTのカルチャーにはマッチしないかもしれません。
テストだけのチームではないんです。黒澤さんや私を含めて「課題意識を持ってユーザーに対してどのような価値を提供していきたいか」という考えで動いています。もちろん、経験や技術があるに越したことはないですしベースにはなりますが、仕事観やプロダクトに対する考え方、成長への意欲や変化を楽しめるといったマインド部分も非常に重要です。「MoTで色々と教えてもらおう」という姿勢では、難しいかもしれませんね。。
ーどういった方であれば活躍が見込まれるでしょうか?
澤田:大きく分けて2つ。1つは、「世の中に貢献したい」「GOのようなプロダクトのクオリティマネジメントに挑戦したい」という方ですね。そしてもう1つは、「受託的な仕事の仕方ではなく、プロアクティブに開発プロセス全体に関わっていきたい」という方になるかと思います。
黒澤:クオリティマネジメント部のメンバーにもよく話すのですが、MoTで求められる業務レベルは非常に高いです。
たとえばタクシーアプリ「GO」ひとつを見ても、お客様は忙しく時間に制約のある状況でタクシーを呼ぶわけです。一方でタクシー乗務員様にとっては日々の営業を支える大切なインフラツールでもあります。いずれにとっても、もし不具合があれば多大なご迷惑をおかけするわけです。しかも車載機サイドは、ソフトウェアだけではなくハードウェアとの連携もしているので、まさにIoTのど真ん中ですよね。
仮に「テストエンジニアを長年やってきました」という方でも、すぐには独り立ちが難しい。なぜなら1から覚え直さなければならない事もたくさんあるからです。よく「入社後の試用期間は3か月」という会社が多く、弊社も実際そうですが、クオリティマネジメント部に関しては「立ち上がるのに、最低半年は見てあげて欲しい」とよく口にしています。
でも、だからこそ難易度の高いプロダクト開発に様々な側面から積極的に携わることができて、その結果として、移動を着実に前進させている日本でも稀有な組織の一員として、誇りとやり甲斐をもって取り組んでいただけるポジションだと考えています。
テストだけにとどまらない、新しいキャリアパスを
ーやり甲斐についてもう少し詳しく教えてください。
澤田:こちらも2つあります。1つは、MoTのプロダクトは実車数などを含めて全て数字で見えるので、自分たちの仕事の成果がわかりやすいこと。一般的なQAだとなかなか見えづらいところもありますが、全て社内公開されているので、モチベーションになっています。
もう1つは、開発エンジニアとの関係性です。クオリティマネジメント部の意見が開発エンジニアにきちんと受け入れられ、すぐに動いてくれる点をやり甲斐に感じているメンバーは多いです。逆にプロセスの自動化など専門的な部分の相談や技術的サポートなどにもすごく協力的なので、とても助かっています。
黒澤:開発サイドからの話をすると、エンジニアのテスト業務を早い段階から積極的に巻き取ってくれているので、エンジニアにとってよりコーディングに集中しやすい環境を作ることに大きく貢献してくれています。会社単位で見ても、クオリティマネジメント部の存在意義は非常に大きいですね。
ークオリティマネジメント部のキャリアについてはどのようにお考えですか?
澤田:一般的には、マネジメントラインかテストのスペシャリストの二択になるのですが、クオリティマネジメントの知見は汎用性が高いので、MoTでは様々なステージで活躍できる可能性を秘めていると思います。
テストの経験・知識がありプログラミングができるのであればテスト自動化エンジニアを目指していくことも可能だと思いますし、最近ではクオリティマネジメント部のメンバーがPdM業務にチャレンジした事例もあります。
また、MoTのプロダクトは複雑であるが故にドメイン知識が非常に重要になるのですが、クオリティマネジメント部は上流段階から踏み込んでいるため、要件書を読んだだけで工程のモレなどにも気づく力があります。この経験と能力を活かした一つのキャリアパスとして、今後はプロダクトドメインに特化したドメインスペシャリストというキャリアもつくっていきたいと思っています。それぞれが強みを発揮して活躍できる場所を、用意していきたいですね。
ー完全にテストだけのステレオタイプ的なQAのイメージはないですね。
澤田:さらに最近ではCS・CXにも関わりを持ち始めて、支援のために動き出しています。CS・CXはサービス全体の窓口である反面、各プロダクトの詳細をキャッチアップし続けることに難しさもありますので、そのスペシャリストであるクオリティマネジメントメンバーが、技術面でのサポートを始めています。
黒澤:クオリティマネジメント部のメンバーほど、プロダクトを熟知している人はいませんからね。プロダクトとユーザーのつなぎ役としての活躍も期待しています。
澤田:改めて、個人個人が専門性を活かして、プロダクトにコミットできる組織だと思います。未熟な部分はありますが、目を背けず磨いて、プロダクトの成長に負けないように、リーンな組織にしていきたいですね。
また部の枠を超えて様々な形でクオリティマネジメント部から積極的な支援を行い、多くの部署の支えになれるような組織にしていきたいと思っています。
※掲載内容は2022年4月時点の情報です。
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