「『GO』はユーザアプリだけじゃない」移動のDXを下支えするハード&ソフトエンジニアたち
タクシーアプリ『GO』のイメージが強いMobility Technologies(以下、MoT)ですが、エンジニアたちが手がけているのはユーザー向けのアプリだけではありません。ユーザアプリと対になって動作するタクシー事業者様向けに提供しているアプリもあります。
『GO』を利用してタクシーに乗ったことがある方なら、後部座席に設置されているタブレットやドライブレコーダーなどを目にしたことがあるかもしれません。端末で使用されている乗務員向けアプリはもちろん、端末そのものも社内のエンジニアが開発しています。
今回はそんなMoTならではの業務を担う3名にインタビュー。ハードウェアの開発を担当する川上 啓道(かわかみ ひろみち)、乗務員向けアプリの開発を担当する狩谷 洋平(かりや ようへい)、佐々木 孝介(ささき こうすけ)がこの仕事の面白さを明かしました。
MoTならではのエンジニアたち
ーまず、それぞれの仕事内容から教えてください。
川上:タクシー後部座席に設置するタブレットやドライブレコーダーといったハードウェア端末の開発設計です。実際の製造工程は協力会社の技術者にお願いしているので、仕様設計がメイン。何度か試作品をつくってもらって、要求通りに動いているか検証して、実際にタクシー車両に取り付けして、もし問題があったら設計を変更して……という仕事内容です。端末ができあがったら、最終的にアプリケーションをインストールして動かしていきます。
ーそのアプリケーションを開発しているのが……?
狩谷:あ、私たちですね。川上たちがつくった車載端末や乗務員向け端末にインストールされるAndoroidアプリの開発・運用を手がけています。
私たちが提供する車載アプリは、今はまだMoT事業統合以前の「JapanTaxi(JTX)構成」と「MOV構成」と呼ばれている二系統があるのですが私はMOV構成の担当です。
佐々木:私は主にJTX構成を担当しています。
開発スタイルとしては、1ヶ月から隔月ぐらいのペースでリリースをしています。ただ、いつまでも二系統で走らせていくのは複雑ですしコストもかかるので、現在は乗務員向けアプリも車載端末側も統合できるアプリケーションの開発に着手し始めています。
ー一般ユーザー向けのアプリと車載端末や乗務員向けのアプリで違いはあるものなのでしょうか。
佐々木:たとえば車載端末の決済アプリは、乗客が自ら操作する構成になっているので、「乗客が操作を間違えない」「簡単に決済できる」「乗務員は運転席に座りながら乗客が操作している様子がわかる」といった点は特に意識しています。
狩谷:アプリを導入していく上で大切なのは、業務の変化で生じるストレスを小さくすること。もちろんタクシー事業者によって仕事の進め方もタクシーメーターの種類なども変わるので、PdMと仕様について何度も対話を重ねますし、必要な場合は渉外メンバーが丁寧に説明しています。そのあたりはバランスをみながら調整していますね。
ーお三方で連携を取るシーンはあるのでしょうか。
川上:仕様設計の部分で相談に乗ってもらうことは多いです。たとえばこれまでの製品の課題やユーザーの声などを取り入れながらハードの仕様を決めていくのですが、「ハード側がある程度用意しておかなければいけない部分はどこか?」などは一緒に考えています。
ソフトと違ってハードはつくり直しが難しいですからね。ハード側で対応できなかった機能をソフト側でカバーしてもらうこともあります。
佐々木:逆にソフトで対応してきたところをハード側の仕様に組み込むことで、私たちは新しい機能の設計にチャレンジできるようになる。そういう意味ではいい関係性が築かれていると思います。
MoTは、大手とスタートアップのいいとこ取り
ーお三方の仕事の全体像が見えてきました。MoTではどういった方が多く活躍されているのでしょうか。
川上:私自身はこれまでエンジニアとしてさまざまなメーカーで働いてきました。得意分野は電子回路などです。ハードウェア開発グループの他メンバーはいわゆる自動車メーカーや自動車部品メーカーの出身者や自動車用品メーカーのエンジニア、車載向けカメラのエンジニアなどが活躍しています。共通しているのは「サービスにコミットしたい」という気持ちですね。
メーカーで働いていると“製品が完成したら終わり”みたいな雰囲気もあり、かつ分業化が進んでいることもあり、自分の仕事の成果を実感しづらいことが多い傾向にあります。でも、MoTであれば実際に使われてフィードバックを直接得ることもできるので、価値提供を実感しやすいのかもしれません。
ー狩谷さん、佐々木さんはいかがでしょう?
佐々木:大手ベンダーや大手SIerのようないわゆる"お堅い会社”出身の方は面白さを感じられると思います。
「たぶん動くと思うからリリースしようぜ」という有名な表現も世の中にはありますが、車載アプリ開発では比較的堅めに開発を進めている印象があります。おそらく一般的なスマートフォンアプリとは違って、車載端末、乗務員端末、さらにはタクシーメーターと、ひとつのアプリが影響を与える範囲が非常に広いため、かなり丁寧に設計した上で実装に臨んでいます。
ただ、当然ベンチャーとしての自由度の高さも備わっていて、ある程度の決定権も委ねられているので、バランスが絶妙なんですよね。大手SIerとWebスタートアップのいいとこ取りのような環境なので、"お堅い会社”出身の方はかなり伸び伸びと働けると思います。
狩谷:確かに、Webベンチャー出身の方は少し硬さを感じてしまうかもしれませんね。プログラミングに専念できるというよりも、あくまでも社会実装が前提なので。機能にまで落とし込むだけの視野の広さ、視点の高さが求められる気はします。
佐々木:ちなみに私も大手SIer向けのソフトウェアを開発していたので、対外的にはかなりキッチリしていました。当時と比べて、かなり自由度の高さを感じています。「こんなに自分でやっちゃっていいんだ」と。
狩谷:僕もSIerで働いていた経験があるので、非常に共感しますね。先ほど“大手SIerとWebスタートアップのいいとこ取り”という言葉が出ましたが、まさにそれです(笑)。裁量が委ねられているので、“大人なエンジニア組織”と言えるかもしれませんね。
ータイプとしてはいかがでしょうか。活躍するための条件などがあれば教えてください。
狩谷:すごくシンプルですが、周りにヘルプを出せることは大切だと思います。先ほどお伝えしたように仕事の影響範囲が広いので、何かトラブルに直面したときにひとりでは解決できないシーンが多い。そういうときに周りにヘルプを出せる人は問題を解決しやすいし、ひいては信頼につながるような気がします。
佐々木:結局、自分の専門分野以外にも関心を持てるかどうかですよね。ハードとソフトで求められるスキルは違うけど、お互い「どんなことをしていて、どんなことに困っているのか」ぐらいは想像できるぐらいに興味は持っていてほしい。ただ、自然と情報が集まってくることはないので、自分から雑談したり、ときには相談したりすることで、少しずつ興味が大きくなっていく。結果としてお互いへのリスペクトにもなりますからね。
川上:ハードとしても同じですね。端末への実装前提でコミュニケーションをとってくれる方は話しやすいですし、とても頼れます。
狩谷:そういう意味では、知りたがりで好奇心が散らかりがちな人は意外といいかもしれませんね(笑)。
現状に物足りなさを感じているエンジニアのみなさんへ
ー改めて、MoTでの仕事の面白さを教えてください。
川上:「主体性を持って働ける」ことだと思います。ハード系エンジニアの就職先としてはメーカーが一般的です。ただ、メーカーの多くはすでに社内基準や開発フローのようなものが定まっていて、体系的に学べるメリットはあるものの、一方で自分で考えて物事を進める機会はどうしても多くないと感じています。
一方、MoTには開発のフレームワークのようなものはまだなく、まさにこれから構築していく段階です。「どうすればより良いモノづくりができるか」という視点で働くことができる環境だといえるのではないでしょうか。
狩谷:今の話と少し似ているかもしれないのですが、アプリケーションにおいても同様の面白さはあるように思います。
一般的にPlayストアで手に入れられるようなスマートフォン向けアプリは開発手法や実装の方法などのベストプラクティスがある程度決まっていることが多い。もちろんベストプラクティスに従って開発するのが一番なのですが、僕らのつくっているプロダクトにはベストプラクティスがまだないんですね。工夫の余地はまだまだある。
自分たちで効率のいいつくり方や運用しやすい設計、テストの自動化などをどんどん掘り下げていける点はエンジニアとしては面白さを感じられるポイントです。
もうひとつは、「移動」という文脈の課題解決に関わる面白さがあります。移動ってまだまだ不便なところもあると思っていて、たとえば公共の交通機関以外の選択肢がなかったり、「行きたい」というときにサッと行けなかったり、車を購入するにもコスト面のハードルが高かったり・・・まだまだ課題が多い分野だからこそ、テクノロジーでアップデートしていく醍醐味はあると思います。
スマートフォンのおかげでコミュニケーション自体も相当アップデートされましたからね。同じように移動のアップデートをリードしていけるチャンスがあることは間違いないので、未来を描くワクワクを味わえるのではないでしょうか。
佐々木:まず、今の開発環境に物足りなさを感じている方は、MoTへ入社したらある程度の満足は得られるのではと思います。繰り返しになりますが、機器やシステムが複数関わり合うアプリケーションを扱っているので、非常に複雑。当然難易度も上がりますし、一筋縄ではいかないことも多々あります。
でも、だからこそ面白い。時にイライラしながらもニヤニヤしながら開発に打ち込める方はきっと楽しいと思いますよ(笑)。四苦八苦しながらも解決まで導けたときの達成感はひとしお。とても刺激的な環境です。
あとは、自分たちの仕事の成果が実感しやすい。街を歩いていれば、そこらじゅうに『GO』のロゴが貼られたタクシーが走っていますからね。
一般的に、私たちがつくるような業務アプリは社会にとって大事な役割を果たしていることは間違いないものの、一歩引いてみるとなかなか表舞台に出ないものばかりなので、裏方感があるんですね。
それはそれでいいんですけど、どこか承認欲求が満たされない部分もあるので(笑)。タクシーに乗って、乗務員さんの後ろから自分が開発したアプリが動いている様子を見られるとやっぱり嬉しいものですよ。
※掲載内容は2022年12月時点の情報です。
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