エンジニア同士の繋がりを生むきっかけに。社内配信番組 『MoT Tech Radio』 立ち上げの裏側
Withコロナ時代の働き方において、重要なテーマのひとつが「社内の情報共有」です。Mobility Technologies(以下、MoT)でもSlackやZoomなどでスムーズなコミュニケーションを心がけています。
より専門性の高い議論やノウハウの共有などを実施すべく立ち上がったのが、SRE(Site Reliability Engineering)グループのグループマネージャー・水戸祐介。彼は、社内のエンジニア陣をゲストに招き、自身がパーソナリティを務める社内限定配信番組『MoT Tech Radio』をスタートしました。
なぜ水戸は『MoT Tech Radio』をスタートしたのか、回を重ねる中で見えてきた変化とは。社内、特にエンジニア間の情報共有に課題を感じている方は必見です。
エンジニア理解が深まれば、会社はもっと盛り上がる
ーSREグループのマネージャーが『MoT Tech Radio』をスタートしたきっかけは?
水戸:開発チーム同士の横のつながりが少ないことに課題を感じたからです。もちろん新機能を開発する際の仕様の調整などでやり取りする機会はあるのですが、それぞれ独立しており、基本的には「どういった仕様のAPIを提供するか」といった各論の話題しかしないので。相手側が手がけているプロダクトの全容までは理解しきれていない気がしました。
時期としては2021年の年末ごろなので、統合から1年半ちょっと経過した頃。タクシーアプリ『GO』は順調で、会社として雰囲気も良くなってきたタイミングでした。せっかくいい流れができているのに、お互い理解しきれていないなんてもったいないじゃないですか。それぞれのキャラクターやプロダクトに対する想いのようなウェットな部分を知ることで、自分の仕事への自信が生まれ、会社として一層盛り上がっていくのではないかと考えました。
幸い、僕自身はSREという立場でさまざまなサービスを横断的にみているので、それぞれの役割や人となりは把握できています。仕事上多くのメンバーとやり取りする機会もあったので、SREという立場を活かしてエンジニアにインタビューするような形で話を聞いていくことで、組織課題解決の一助を担えるのではないかと考えました。
ーSREとしての通常業務に新しい業務が加わることに抵抗はありませんでしたか?
水戸:リソースについてはそこまでは重く受け止めていません。負担はゼロではないのですが、そもそも自分にある程度知識があることが前提なので、今も事前準備などにあまり時間はかけていないんです。
自分の聞きたいことを聞き出せればそれなりに面白くなる感覚はあるので、基本的には人選と構成だけ軽く決めて、ぶっつけ本番で臨んでいます(笑)。会社のOKRとして「エンジニアの開発体験を向上する」という目標が設定されていたので、うまく便乗して取り組んでいる感覚ですね。上司にも「まぁ、これも目標なので」と(笑)。
ー参考にした番組はありますか。
水戸:前職で同じチームだった宮川達彦さんというエンジニアがMCを務める『Rebuild』というPodcastからは多少影響は受けています。同じチームだったときに始められて、もう10年近く配信されていますし、自分も聴き続けてきているので。
話題性? 知名度? テーマ決めや人選のポイント
ー番組を制作・配信するにあたって気をつけていることは?
水戸:先ほどの繰り返しになりますが、簡単な構成や質問表などは事前に共有しています。
僕が関わりの強いプロダクトであればある程度知っていますが、そうでなかった場合は概要は自分の中で理解している状態にして、さらに面白そうなところを深掘りするようなやり方です。0からヒアリングしていくというよりも、ある程度わかっている上で話を聞いていくようにはしていますね。
配信中はなるべく相手の言わんとするところをわかりやすく反復するような話し方を心がけています。当日の感覚次第ではあるので、難しい部分もありますが、できる限り。
ー人選についても教えてください。
水戸:いくつかの条件の中から選んでいます。たとえば「最近リリースされたプロダクトの裏側」、「割と関わっている人が多そうでエンジニア以外の方でも聞いたことのあるプロダクト」、あとは逆に「社内の知名度が低いであろうプロダクト」ですね。
たとえば空間情報プロジェクト『KUU』は『GO』の開発チームとは完全に分かれているので、詳しく知らない人も社内にいるかもしれない。「だからこそ、あえてピックアップする」ようなこともありますね。
もちろんたくさんの人に視聴してもらいたいので知名度や話題性のあるテーマを選びたいのですが、そればかりでは意味がないので。試行錯誤しながら人選も決めています。
ー手応えは感じますか?
水戸:当初は「全く反応がなかったらどうしよう」と不安もあったのですが、初回から聴いてくれる人がいて、フィードバックまでもらえたことで「やる価値はありそうだ」と感じられました。
あとは単純に新しい知識を習得することが楽しいですね。最悪、誰も聴いてくれなくても僕の知識習得には役立っているので、続けるモチベーションにはなっています(笑)。
ー『MoT Tech Radio』という名称ですが、実は音声だけではないんですよね。
水戸:そうですね。Teamsで配信しています。システムのアーキテクチャなど口頭だけでは説明しづらい話題も多いので、資料なども共有しながら配信しています。ですから、ゲストにはテーマに沿った資料があれば準備してもらうこともあります。
ただ、名称は『MoT Tech Radio』の方がキャッチーなので、矛盾には目をつぶっています(笑)。
自分の興味・関心に正直に
ー水戸さんの中で印象に残っている回はありますか?
水戸:AIをテーマにした回は、自分があまり明るくない分野だったので学んでいく過程自体が面白かったです。
たとえば、ETAという到着時間を予想するサービス。アウトプット自体は「あと◯分で到着します」という単純な数字なのですが、高い精度で算出するためにはかなりの手間がかかっています。「あと1分で到着する車両」と「あと3分で到着する車両」だったら当然前者を配車したいと思いますが、もし精度が低く「あと3分で到着するはずだった車両が先に到着した」みたいなことが起きると体験そのものが悪くなってしまう。精度を上げるために経路探索と機械学習を組み合わせたアルゴリズムを開発していく過程のお話はとても興味深かったです。
もうひとつは、新規事業の「KUU(空間情報プロジェクト)」という地図の自動更新を研究開発するプロジェクトです。地図とドラレコで撮影した映像との差分を見て、看板の増減などを更新していくプロジェクトなのですが、僕がいろいろと深掘りしたところメンバーから「初めてプロジェクト外の人に詳しく伝えられる機会ができた」とフィードバックをもらえました。テーマ自体も面白かったのですが、ポジティブな反応があるとやはり嬉しいですね。
ーエンジニア以外のメンバーにも届けようという気持ちは強いのでしょうか。
水戸:もちろん意識はしますが、意識しすぎないようにしています。全社的な取り組みは人事のメンバーが実践しているので、基本的にはエンジニアを対象にしています。
だから、トークの中で専門用語が出たり、エンジニア特有の考え方などが出たりすることがありますが、あまり手加減はせずに「エンジニアならわかるだろう」という感覚で喋っています。
ただ、エンジニアでも知らないサービスの場合は「そもそもそれ何?」というところから話さなければ伝わりません。エンジニア以外でも理解できるレベルに合わせることはありませんが、基本的には誰が聴いても理解できる話し方を心がけています。「つまりこれって……」「このサービスで課題を解決したいのは……」みたいな言葉は多いかもしれません。
ーSREの仕事に活かせたことはありますか。
水戸:具体的に「『MoT Tech Radio』をやっていてよかった!」という経験はまだありません。ただ、少し抽象的かもしれませんが、サービスの設計パターンの理解を深める機会にはなっていますね。
SREの仕事は全体最適の側面が強く、大量のサービスがそれぞれ異なるパターンで開発されてしまうと管理しきれなくなってしまう。サービスの本質に関わる違いは維持しつつも、一緒でいい部分は統一していくべき。そのためにはSREとして「このパターンなら、あのサービスと同じやり方ができるだろう」と選択肢を持っていることが大事です。
『MoT Tech Radio』を通じて自分の知識が浅かったり、関わりが薄かったりした部分に向き合って内容を理解しておくことは、いずれ役立つと思います。
社内だからこそ話せるテーマで盛り上がりたい
ー今後の取り組みについても教えてください。社外への発信なども視野に入れているのでしょうか。
水戸:社外への発信はあまり考えていません。社外向けの発信については定期的に開催しているMoT TechTalkやカンファレンスといった機会があるので。
それよりも『MoT Tech Radio』では社外では話せないようなことも含めてどんどん話していきたい。一般的な技術発表会とは異なるフォーマットで、社外では発信しづらいことを取り上げていきたいですね。
どんどんテーマを掘り下げていくことで、エンジニアのMoTに対する満足度も高くなるような気がするんですよね。「MoTが好き」という人が増えれば、ゆくゆくは採用シーンでも役に立つはずですし。
今はテーマ自体手探りな部分はありますが、「わかる人にはわかる」みたいな回を考えてみてもいいかもしれませんし、もっと「エンジニア個人」にフォーカスした回を考えてみるのも面白いと思います。
ー現在はワンオペですが、メンバーの増員などは検討していますか。
水戸:それもあまり考えていませんね。事務的な負担はそこまで大きくないですし、自分以外の人がしゃべることでうまくできるのかまだわからないので。
ーリスナーの数は増えていますか。
水戸:テーマによって増減はありますが、初回から大きな変化はありません。興味を持ってくれている人が一定数いることはとてもありがたいです。
最近Slackの権限を付与してもらい、Slackでどれだけの人が自分の告知メッセージを見ているかを確認できるようにしたのですが、まだまだ気づいていない人もいるような状況です。
ですから、伸び代はあると思います(笑)。僕も、もっとたくさんの人に聴いてもらいたい気持ちはありますし。ただ繰り返しになりますが、数字を気にしすぎても意味がないので、自分が楽しめることをやりたいですね。とりあえず、話すテーマが尽きるまでは続けようと思います。
ー「『MoT Tech Radio』のおかげで知らないことを知れた」と思っている人は少なからずいると思います。
水戸:コミュニケーションのきっかけになっていたら嬉しいですよね。先日「セールスのオリエン用資料に使いたい」というコメントを見かけたのですが、いい意味で二次利用がされるようになれれば嬉しいです。
そのためにはもうちょっとゆるくしたいですよね。まだ小難しくなりがちな部分はあるので。ゆるさと深さを両立できるような番組にしていきたいと思います。
※掲載内容は2022年11月時点の情報です。
採用情報
MoTでは、共に働く仲間を募集中です。
興味がある方は、お気軽にご連絡ください!